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Text File  |  1994-11-16  |  2KB  |  34 lines

  1. 522/523   WST00364  和田 光平         身は身で通る(上方)
  2. ( 8)   94/03/22 19:31
  3.  
  4.   身は身で通る(上方)
  5.  
  6.  人は皆,自分なりの生き方が出来る.身は身で通る裸坊主ともあります.色々指導さ
  7. れても,結局自分の好き勝手に生きる.そんな意味もあります.
  8.  規制とか常識の枠では分類仕切れない或る種の人々が存在します.それは時にバサラ
  9. と呼ばれ,時に遊行の僧と呼ばれます.一度しかない人生を己の求める世界に投入し
  10. 燃焼し尽くす人.近代日本に於ける,このような人物に南方熊楠がいます. 
  11.   菌子類や粘菌類の研究による生命科学や,フィールドワークによる民俗学,仏典や
  12. 中国の古典,大英博物館の書物から得た博物学.そうしたもののミックスで追求された
  13. ものは,人間を取り巻く生命を描き尽くしたマンダラの世界.熊野の森林をこよなく愛
  14. し,神島を愛し, 後半生を田辺市に落ちつけた学者. 今もその全貌が解明されない,
  15. 一種の変人が,ミクロな体と時間を駆使して知ろうとした巨大な世界.
  16.  NHK 衛星第二放送で(3/20,21)2日間に渡り, 延べ3 時間を越えて放映された番組
  17. 「南方熊楠」を見た感想は, 荒俣宏さんや, 中沢新一さん, 松岡正剛さんたちが一生
  18. 懸命,近づこうとする人物の, 掴み所のない大きさでした. 
  19.  テレビ映像に映し出されるロンドン博物館で抜き書きしたロンドン抜書. そして田辺
  20. 市で一切経を始めとした和漢の書物から抜き書きした田辺抜書. その膨大なデータが
  21. 彼の散文を生んだ元でした. 現在, 熊楠の映画制作が進んでいるそうです. 
  22.  東京大学に保存される菌子類や粘菌類の標本やスケッチは, 夥しい量に及び, 新種と
  23. 見なしていた物の多くを全く学会に発表しなかった行動は, 俗世間を超越していたから
  24. なのでしょうか. 
  25.   松居竜五さんの著書「南方熊楠  一切智の夢」( 朝日選書) には若き日の熊楠が分析
  26. されており, この人の理解を大いに助けてくれます. 英国の雑誌「ネイチャー」や
  27. 「ノーツ・アンド・クィアリー」誌への投稿が, 彼の最初の論文発表の場となったこと
  28. が分かります. 映像の中で長女の文枝さんが, 父を思い出しつつ田辺市の実家, 庭先で
  29. 語ってくれました. 「大英博物館の, あの丸い図書館に入った時, 自分の求めていた所
  30. はここだったんだと. そう思ったと申しておりました. 」
  31.  最愛のこの図書館を自ら起こした暴力沙汰で, 追われてしまった熊楠. 失意の帰国後
  32. の活躍. 凡人には計れない行動様式です. 
  33.                             東海支社)和田 光平
  34.